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昨年発表された、沢の鶴とヤンマーがタッグを組んで挑戦する、新しい酒米作りのための取り組み「酒米プロジェクト」。
先進的な開発技術と営農ノウハウをもっている「ヤンマー」と、 三百年にわたって、伝承の醸し技と品質へのこだわりを受け継ぎ、日本酒を造り続ける「沢の鶴」。この両社が協力し、“日本の米作り、日本の農業を変えたい”という両社の熱い志のもと、発足されたのが「酒米プロジェクト」です。
このプロジェクトから誕生した初めての日本酒が「沢の鶴 X01」。「沢の鶴X02」は、さらに米、栽培、醸造、すべての面で進化を追求した日本酒です。
「沢の鶴」と「ヤンマー」のタッグによって始まった“酒米プロジェクト”は、
昨今大きな賑わいを見せている。
約2万種類にもおよぶ米の種子から取捨選択と試験醸造を
何度も繰り返し誕生したX01から1年…。
「品質向上」と「安定供給」をテーマに掲げ
米、栽培、醸造、すべてが進化したX02とは?
日本酒の新たなる可能性とプロダクトの完成秘話を
沢の鶴 取締役・製造部部長兼総杜氏代行の西向賞雄に聞く。
酒米から刷新すると聞いたときの想いは?
酒米の開発から着手するというのは、私たちが単独でやろうと考えても難しいものでした。なぜなら、私たちは酒米の生産者ではないからです。それが日本の農業界を牽引しているヤンマーさんと手を組んでできるというのは、非常にワクワクしたのを覚えています。開発候補のお米で小仕込を行い、出来上がったサンプルのお酒をテイスティングし、生産する酒米を選定し絞り込んでいく。その手順のひとつひとつが、厳しくもあり斬新なものでした。そして、商品化を見据えると出来上がったお酒の品質だけではなく、団子にならず、サバケの良い蒸米になるかどうかも、評価の重要なポイントでした。これらを総合的に熟考するという取り組みそのものが、初めての体験でした。
“酒米プロジェクト開発商品”のコンセプト段階での期待と不安について
全く未知のお米で純米大吟醸酒を作るということでしたので、不安要素が先行しました。候補になるお米を評価するために小仕込を行ってテストをしていましたが、実際にお酒造りとなるとスケールも大きくなりますし、小仕込と異なる点も出てきます。周囲の期待も背負い、たった1回の仕込でいいものを作らなければならないという不安プレッシャーでした。私は、実際にお酒造りをしている若い社員の技術を信じてお酒の完成を待っていました。
X01からX02の製造において進化した点
「使うお米から最大限に良さを引出そうと考えた」ということでしょうか。初めて使うお米の特性を理解した上で、原料処理や醪の発酵などを根本から考え直しました。そうやって造ったお酒を飲んでもらって「美味しい」と言ってもらうと、造り手冥利に尽きます。また純米大吟醸酒は、普通は冷やしておいしいものですが、20℃前後の常温でも飲用特性があるということも新しい発見でした。X01の時は原料米の取れ高が少なく、新しい4品種を一緒に仕込まなければ商品販売ベースのお酒の量が確保できませんでした。もちろん醸造適性の高い品種を選んで仕込みましたが、品種が変われば原料処理のツボも変わるので、お酒の仕込には大変な苦労をしました。X02は新しい候補の品種から酒米を1種類に絞り込んで仕込むことができ、そのお米から最大限の良さを引き出せるというメソッドも確立できたと思います。X01よりもX02の方が仕込みのサイズも大きくなったことで、スケールアップの不安も当然ありましたが、それらを克服して美味しいお酒ができたことも進化したポイントだと考えています。その点においては今年のテーマでもある「品質向上」と「安定供給」に繋がったシーズンだと感じています。
リモートセンシングを駆使した日本酒の可能性
リモートセンシングには大いに期待しています。もちろん、稲は足音を聞いて育つとも言われますので、地道な肥培管理も大切だと思います。現在、ヤンマーさんで行っているリモートセンシングは、圃場ごとの肥料の管理に生かされており、お米の生産者の経験に具体的な数値を提供し、さらに最適なお米の育て方を探求していくもので、素晴らしいと思います。原料米品種の肥培管理の特性を明らかにすることで、酒米としても最適な品質で、お米の収量も十分確保できるようになります。お米の生産者と酒屋の最適な相互関係を築けることも素晴らしいと思います。今後突き詰めていくと、タンパク質の量や脂質の少ないお米を磨かなくても美味しいお酒ができる栽培方法が確立される可能性も十分に期待できます。
酒米プロジェクトの今後の展望
酒米プロジェクトは、商品とお米の開発がセットで進んでいます。今後も新しいお米と取り組んでいきますので、どんな新しい価値観を持った酒米ができるかが、とても楽しみです。今までの山田錦をはじめとする酒造好適米もとても大切ですが、X02のテーマであった「品質向上」「安定供給」をベースグレードに、山田錦などと双璧をなすような新しい価値観を持った酒米の開発が夢です。ある意味で、お酒造りのセオリーを大きく変えるお米が誕生することになるかもしれないです。もちろん一朝一夕にはできませんが、粘り強く取り組んでいけば、日本酒の国内外に対する価値観や認識にも深みが出ると信じています。江戸時代から続く300年以上の歴史を礎に、新たな時代の幕開けを創造していければと考えております。
西向 賞雄(にしむかい たかお)
沢の鶴 取締役・製造部部長兼総杜氏代行
1965年 神戸市生まれ。1990年入社。
2008年より「総杜氏代行」(酒蔵の責任者)として酒造りの総指揮を執っている。
沢の鶴 X02(エックスゼロツー) 純米大吟醸 ¥5,400(720ml) ¥1,620(180ml)