酒米の王様「山田錦」とは?日本酒造りの米・水へのこだわり
日本酒はお米と水で造られていますが、実は日本酒の原料となるお米は普段私たちが食べているお米と違う場合があることはご存じですか?日本酒は酒米と呼ばれる、日本酒造り専用のお米が使われていることがあります。
今回は、酒米と食用米の違いや、中でも酒米の王様といわれている「山田錦」の特徴、さらに日本酒造りに欠かせない水についてもくわしくご紹介します。
Contents
酒米とは?
酒米は「酒造好適米」もしくは「醸造用玄米」が正式名称です。文字通り酒造りのために造られたお米で、同じお米といっても食用のお米とは異なる特徴があります。
酒米は、粒が大きく心白がある
(左)山田錦、(右)普通米
酒米と食用米の大きな違いは、粒の大きさと「心白」が見られることです。
お米の表層にはたんぱく質が多く、中心にいくほどデンプンが多く含まれています。食用の場合、たんぱく質は旨味の元となり重要な存在です。しかし、酒造りの場合はたんぱく質が多すぎると雑味の元になり、酒の香りが消されてしまいます。そこで、酒米は精米しやすくするため食用米よりも大きなサイズに育成されるわけです。
吟醸酒や純米酒のような特定名称酒のラベルには精米歩合が記載されていますが、精米歩合が70%の場合は30%ほどお米を磨き、残り70%を使って日本酒を造っているということになります。
また、心白が大きいのも酒米の特徴です。心白とは米の中心部の、デンプンが多く含まれる白色不透明な部分のことです。
粘度と強度の高い心白は、精米の過程で砕けにくく、日本酒の元である醪(もろみ)に溶け出しやすいという性質があります。そのため、心白の大きい酒米は日本酒造りに適しているのです。
全国に広がる酒米の産地
それでは、酒米にはどのような銘柄があるのでしょうか。もっとも有名な酒米は「山田錦」ですが、その他にもさまざまな品種の酒米が全国で生産されています。
例えば有数の酒どころの新潟県では「五百万石」という酒米が生産され、新潟の日本酒の代名詞「淡麗辛口」の味わいの元になっています。また、長野県は「美山錦」、岡山県は「雄町」いう酒米があり、各県の日本酒の味わいを決定づけています。
このほかにも、北は北海道から南は九州まで、さまざまな酒米が生産されています。
酒米の王様「山田錦」の特徴
山田錦は、大正12年に兵庫県立農事試験場(現在の県立農林水産技術総合センター)で、母に「山田穂(やまだほ)」、父に「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」を人工交配して誕生した酒米です。「山田錦」という名前は、その後昭和11年に付けられました。
山田錦は兵庫県以外でも生産されていますが、生産量は兵庫県がトップです。
農林水産省の酒造好適米の農産物検査結果データによると、令和元年の山田錦生産量は
・1位:兵庫県(20,542トン)
・2位:岡山件(2,926トン)
・3位:山口県(2,337トン)
となっており、全国で34,644トンあるうちの約60%を兵庫県が占めています。
参考資料:酒造好適米の農産物検査結果(生産量)と令和2年産の生産量推計② (銘柄別)
令和2年度酒造好適米等の需要量の追加調査結果及び令和2年産の生産状況等(農林水産省HP)より
山田錦の「特A地区」とは
兵庫県で生まれた山田錦にとって、兵庫県の気候や土壌といった環境がもっとも適していることが生産量がトップである理由の1つとして挙げられます。
山田錦は普通の稲穂よりも背丈が高いため強風に弱く、また適切な気温や温度差など細かな適正条件が合致しないと正常に育たないなど複雑な特性をもつ酒米です。
その適正条件に一致するのが兵庫県であり、中でも六甲山裏地区にあたる三木市吉川町(みきし よかわちょう)、加東市東条町(かとうし とうじょうちょう)、加東市社町(かとうし やしろちょう)は、特に評判の高い山田錦の生産地として「特A地区」と扱われています。
これらの特A地区で育った山田錦は、もっとも質が高い「特上」の等級をもつ山田錦になるのです。
酒米の王様と呼ばれる理由
山田錦が酒米の王様と呼ばれる理由は、酒造りに最適な以下の特徴をすべて網羅しているからです。
・粒が大きいため、高い精米歩合に耐えられる
・雑味の元であるタンパク質が少ない
・吸水性が良いため、麹が活性化しやすい
・良質な麹を作ることができる
山田錦は日本酒造りのために品種改良された「酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」の中でもその優れた特徴から、多くの日本酒の原料として使用されています。
酒造好適米については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
おいしい日本酒は、水にもこだわる
次に、お米とともに日本酒造りに欠かせない原料である水に注目してみましょう。日本酒の成分の約80%は水なため、おいしい日本酒には水がとても重要です。
ここでは、酒造りで有名な名水をいくつかご紹介します。
〇灘の宮水(なだのみやみず)
江戸末期の天保(てんぽう)11年(1840年)に酒どころの兵庫・灘で発見された名水です。硬度約180という硬水が、キレのあるしっかりとした味わいの、灘の日本酒を造り上げています。
また、麹・酵母の栄養となるリンやカルシウム、カリウムが多く含まれており、酒造りにおいて理想的な水といわれています。
〇伏見の御香水(ふしみのごこうすい)
日本屈指の酒どころ京都伏見の名水。伏見はかつて「伏水」と呼ばれていたほど、上質な地下水が豊富な土地で、古くから多くの銘酒がこの水から造られてきました。口あたりの良さが特徴で、ミネラルがバランスよく含まれている酒造りに適した水です。
〇富士山の伏流水(ふじさんのふくりゅうすい)
南アルプスの雄大な自然の中で育まれた富士山の伏流水は、ミネラルの含有量が穏やかな軟水です。こんこんと湧き出る清らかな水は、軽やかな口あたりが特徴。フルーティーな香りを特徴とする、静岡県の吟醸酒造りに欠かせない名水です。
おわりに
今回は、日本酒の原料である酒米・水に焦点を当ててお伝えしました。原料が限定される日本酒だけに酒米、水ともにその選び方ひとつで、日本酒の味が大きく左右されます。
自分の好みの日本酒に出会うには、日本酒の種類や銘柄などさまざまな観点がありますが、酒米と水を手掛かりに日本酒を探してみることもおすすめです。ぜひ原料や産地にも注目して日本酒を選んでみてください。
山田錦を使用したおすすめの日本酒はこちら
沢の鶴「実楽 山田錦」
酒米の王様「山田錦」を名乗る日本酒のひとつが、特A地区の山田錦使用の「実楽 山田錦」です。冷酒で飲むのも良いですが、燗酒(35℃~40℃)で飲むとよりお酒の味わいを楽しむことができ、おすすめです!
- 特別純米酒
- 受賞実績アリ!
- アルコール度数:
- 14.5度
- タイプ:
- 醇酒(コクのあるタイプ)
米と水にこだわった本格派「純米酒 山田錦 300ml」
「純米酒 山田錦 300ml」は山田錦を55%使用し、すべて日本産米で醸造した本格派。水は酒造りに適した灘の宮水を使用しています。米と水にこだわることで、キレとコクのある味わいになりました。やや辛口ながら口あたりはまろやかで、繊細な味わいを引き出す山田錦の特徴を生かした1本です。
今夜は少し上質な日本酒を楽しみたいという時は、ぜひ沢の鶴「純米酒 山田錦 300ml」をお試しください。
沢の鶴「純米酒 山田錦 300ml」
- 純米酒
- 人気商品
- のみごろ温度:
- 【冷】15℃(涼冷え)【燗】45℃(上燗)~50℃(あつ燗)
- 度数:
- 14.5度
沢の鶴「おうちできき酒 山田錦セット 日本酒&利き猪口」
2つの味わいを楽しめる!特別純米酒の「実楽山田錦」と特別純米生原酒の「100人の唎酒師」がセットになった日本酒好きにはたまらない飲み比べセットです!
- 特別純米酒/特別純米生原酒
- 日本酒好きにおすすめ
- アルコール度数:
- 実楽山田錦(14.5度)、100人の唎酒師(18.5度)
- 原材料:
- 米(日本産)・米麹(日本産米)
1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。
沢の鶴はこれからも日本酒文化を大切にしながら、みなさまの毎日の食事がもっと美味しくなるお酒造りを続けていくと共に、このWEBメディア『酒みづき』を通して、より多くの方々に日本酒の美味しさや楽しみ方に関する情報をお届けしてまいります。
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※お酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量を。飲酒運転は、絶対にやめましょう。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児に悪影響を与えるおそれがあります。
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