生酒の賞味期限や保存方法を解説!常温保存は避けるべき?
生酒を購入した際に、賞味期限や保存方法について疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。賞味期限はどのくらいなのか、常温で保存して良いのか、劣化を防ぐためにはどのように保存すれば良いのかなど、気になることはたくさんあると思います。
今回は、生酒の賞味期限や保存方法をはじめ、一部の生酒で用いられる「限外ろ過(げんがいろか)」と呼ばれる工程や、ぜひ味わっていただきたいおすすめの生酒についてご紹介します。
Contents
生酒とは?
生酒とは、文字通り「生」のお酒です。
通常の日本酒は、製造工程で「火入れ」という加熱処理を行います。これは日本酒の酵母菌を死滅させ、発酵を止めることが目的です。発酵を止めると日本酒は一定の品質を保つことができるため、長期的に日本酒を楽しめるようになります。
一方、生酒はこの火入れを一度も行わずに造られる日本酒です。加熱処理の工程を行わず、そのままの状態で出荷されるため、フレッシュで若々しい味わいを楽しめる大きな魅力があります。
それだけに生酒を購入した際は、他の日本酒よりも品質が変わりやすい点に注意しなければいけません。生酒本来の味わいを十分に楽しむために、適切な賞味期限と保存方法を知っておく必要があります。
生酒の賞味期限は?
まずは生酒の賞味期限について解説します。購入してからどのくらい保存ができて、開封後は何日以内に飲み切らなければいけないのでしょうか。
生酒(を含む日本酒)に賞味期限はない
生酒(を含む日本酒)には賞味期限表示がありません。賞味期限の表示義務はなく、その代わりにラベルにいつ造られたお酒なのかを示す「製造年月」が記載されているお酒もあります。
※製造年月は以前まで表示が義務付けられていました、現在は任意となっています。
製造年月から時間が経っている日本酒でも、開栓前であれば健康上は問題なく飲めることが多いですが、お酒の味わいは変化しています。そのため、美味しく飲める期間に飲むことをおすすめします。
生酒の美味しく飲める期間は、開封前と開封後で異なります。先述したように生酒は加熱処理を行っていないデリケートなお酒です。美味しく味わうためにも、開封後は冷暗所に保管の上、できるだけ早めにお飲みになることをおすすめします。
開封後は何日以内で飲み切れば良い?
通常、生酒は開封後、封をして冷蔵庫に保存しても、1週間が経過すると味の変化を感じることがあります。そのためしぼりたてのフレッシュな味わいを楽しむためには、開封して一週間から10日間程度で飲み切ったほうが良いでしょう。
なお、これらの期間はあくまで目安で、保存状態によって変化することがあります。酒造メーカーや銘柄によって推奨期間が異なる場合もありますので、購入の際に確認しましょう。
生酒の保存方法は?常温でも保存できる?
生酒を含む日本酒を保存する場合には、瓶の口をきれいに拭き、紫外線が当たらない場所に置く必要があります。紫外線が当たると、日本酒が劣化して香りや味わいが変化し、独特な臭いを発する場合もあるので気をつけましょう。
生酒は10度以下の冷蔵保存がおすすめ
日本酒の中でも生酒は酵素が生きている繊細なお酒です。そのため、10度以下の冷蔵保存が必須とされる生酒が流通しています。
後述する限外ろ過の生酒は常温で保存ができますが、限外ろ過の生酒でも、開封したあとは封をして冷蔵庫で保存するようにしましょう。冷蔵庫で保存すれば劣化スピードが遅くなります。
ただし、冷蔵庫であっても徐々に変化することは避けられないため、生酒の新鮮な味わいや香りを楽しみたいなら可能な限り早めに飲み切ることが大切です。
生酒は日光を避けて保存する
先に説明したとおり、生酒は冷蔵保存が必須の日本酒です。そのため、たとえ1日程度の常温保存でも発酵が進み、品質に影響が出る可能性があります。特に日光の当たる場所や夏の暑い時期での常温保存は避けるようにしましょう。
すぐに冷蔵庫へ保存ができない場合は、日光の当たらない冷暗所で保管するようにしてください。
生酒は常温で保存すると腐る?
生酒をはじめとした日本酒はアルコール度数が高く、基本的に腐ることはありません。しかし、適切な保存方法を行わないと「劣化」していきます。また、火落菌という乳酸菌の繁殖により、色味・香り・味わいに大きく影響することもあります。色が黄色っぽく変化したり、酸っぱい香りがしたりと、本来の品質ではなくなるため常温保存は避けるべきでしょう。
特に生酒は加熱処理を行わずに出荷される日本酒です。劣化のスピードは一般的な日本酒よりも早いので、常温保存を避け、開封前でも冷蔵庫で保管することがおすすめです。
生酒の製法でも使用される「限外ろ過(げんがいろか)」
限外ろ過(げんがいろか)とは、一般的なろ過では濾せない非常に微細な粒子を分子レベルで濾す方法です。生酒に存在する酵素を除去することによって品質の変化を抑えることが可能であり、香りや味わいを長期間維持できます。
一般的に生酒は品質変化が速いため広く流通させることが難しいお酒ですが、限外ろ過をすることによって、常温でも一定期間味わいを変化させずに保存することができます。限外ろ過を行うことで、しぼりたての生酒の味を消費者に届けることができます。
- 純米生原酒
- 限外ろ過製法
美味しい日本酒を届けたい。100人のきき酒師の物語。
- アルコール度数:
- 18.5度
- 飲みごろ温度:
- 10℃(花冷え)~15℃(涼冷え)、20~25℃(常温)
限外ろ過の工程
沢の鶴の「100人の唎酒師」は、この限外ろ過の工程を用いた生酒です。通常の日本酒が造られる工程との違いを図に示したものがこちらです。
ここでは実際の生酒の限外ろ過の工程を、写真を交えながらご紹介します。
生酒・生貯蔵酒・生詰め酒・通常の酒ができるまでの工程です。発酵・圧搾(上槽)・ろ過までは、同じ工程ですが、それ以降の工程がそれぞれのお酒で異なってきます。
限外ろ過機の外観です。縦のパイプには細いチューブ状のフィルター(中空糸膜)があります。
フィルターの穴の大きさは0.2μm(マイクロメートル)よりも細かく、0.001~0.01μm程度です。
圧力をかけることで徐々に押し出す仕組みであり、水や小さな分子を通してろ過します。しかし、0.001~0.01μm程度のフィルターであるため、タンパク質といった高分子は通しません。
生酒の中にある酵素(=タンパク質)を除去して瓶詰めします。
沢の鶴おすすめ生酒を紹介!
沢の鶴は、兵庫県神戸市の灘にある300年以上の歴史がある酒蔵です。ここでは沢の鶴自慢の生酒を2つご紹介いたします。
100人の唎酒師
沢の鶴に在籍する100人以上の唎酒師が、自分達が飲みたい日本酒を考え、造られた日本酒です。火入れをしない生酒ですが、限外ろ過を用いることで日本酒の品質が変化しにくいことが魅力の1つだといえます。
しぼったままの味わいと香りを楽しめることが特徴であり、アルコール度数18.5%の生原酒で、しっかりとコクがあるフルボディーなお酒です。米の香りや旨味を実感できるので、肉料理といった料理の味が強いものに合わせることがおすすめです。
また、アルコール度数が高い原酒のため、氷を入れて冷やしながら飲むのも良いでしょう。
- 純米生原酒
- 限外ろ過製法
美味しい日本酒を届けたい。100人のきき酒師の物語。
- アルコール度数:
- 18.5度
- 飲みごろ温度:
- 10℃(花冷え)~15℃(涼冷え)、20~25℃(常温)
<特設サイト>
100人の唎酒師特設サイト
本醸造生酒
本醸造ならではの深い旨味と、生酒ならではの新鮮で爽やかな味わいを楽しめる日本酒です。優しい口当たりでフルーティな香りが広がり、蔵出しそのままの品質をお楽しみいただけます。飲み頃の温度は冷蔵庫から取り出したあとの「5℃の雪冷え」、時間が経過したあとの「10℃の花冷え」「15℃の涼冷え」がおすすめです。清涼感あふれる爽やかな味わいを感じられます。
- 本醸造酒
- 生酒
本醸造ならではのコクのある旨味と蔵出しの新鮮な味わいが生きた生酒。
- アルコール度数:
- 13.5度
- 飲みごろ温度:
- 5℃(雪冷え)、10℃(花冷え)、15℃(涼冷え)
おわりに
生酒には明確な賞味期限はありませんが、保存方法に気をつけなければ劣化が進むデリケートなお酒です。しかし、生酒ならではの搾りたての新鮮な香りや味わいは、他の日本酒にはない唯一の魅力ともいえます。
当記事でお伝えした保存方法やメーカー推奨の方法などを参考に、適切な保管を行いながら生酒本来の味わいをぜひお楽しみください。
1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。
沢の鶴はこれからも日本酒文化を大切にしながら、みなさまの毎日の食事がもっと美味しくなるお酒造りを続けていくと共に、このWEBメディア『酒みづき』を通して、より多くの方々に日本酒の美味しさや楽しみ方に関する情報をお届けしてまいります。
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※お酒は20歳になってから。お酒は楽しく適量を。飲酒運転は、絶対にやめましょう。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児に悪影響を与えるおそれがあります。
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