公開日: 日本酒を知ろう

酒蔵(さかぐら)と酒造(しゅぞう)の違いとは?日本酒造りに関連する用語を徹底解説

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酒蔵「酒蔵」と「酒造」は、日本酒をはじめとしたお酒造りの話しをする上で欠かせない言葉の1つです。しかし、どちらも「しゅぞう」と読めてしまうことや字面や語感が似ているため、両者の意味や違いがわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで当記事では、「酒蔵」と「酒造」の違いを徹底解説します。加えて、日本酒造りにおける関連用語もご紹介しますので、日本酒造りの知識を知りたい方は最後までご覧ください。

「酒蔵」と「酒造」の違い

「酒蔵」と「酒造」の主な違いは、読み方とその意味にあります。

読み方意味
酒蔵さかぐら酒を醸造する蔵、または貯蔵しておく蔵のこと
酒造しゅぞう酒を造ること

上記の通り、「酒蔵(さかぐら)」はお酒を造る蔵のことを指し、“場所”を表します。一方で、「酒造(しゅぞう)」はお酒を造ることを指し、“行為”を表すという点が両者の違いです。

続いては、それぞれの言葉を詳しく解説いたします。

酒蔵とは?

酒蔵はお酒を造り、貯蔵する場所ですが、日本酒以外にもワインやウイスキーなどの酒蔵も存在します。ただし、ワインはワイナリー、ウイスキーは蒸留所などとも呼ばれており、「酒蔵=日本酒を造る場所」という認識で扱われることが一般的です。

 

また日本各地に点在する酒蔵では、酒蔵見学を実施しているところも少なくありません。実際にお酒が造られる工程を間近で見学できたり、お酒の歴史や文化について触れられたり、しぼりたてのお酒を試飲できたりと、さまざまな体験ができます。

日本酒の酒蔵が多い都道府県

日本酒の酒蔵は、どの都道府県に多いのでしょうか。

国税庁の「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和3年調査分)」によると、清酒の事業者が最も多い県は新潟県(88者)、次いで長野県(72者)、福島県(58者)と続きます。沢の鶴の酒蔵がある兵庫県(56者)は、全国で4番目に清酒事業者が多いエリアです。

出典:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況(令和3年調査分)」

日本酒造りの歴史

日本酒上述のとおり、酒造はお酒を造る行為をいいます。では酒造の始まりはいつ頃でしょうか。

 

日本における酒造の歴史はとても長く、酒造りが始まったのは紀元前300年ごろの縄文時代後期から弥生時代前期とされています。約1300年前の書物「播磨国風土記(はりまのくにふどき)」に日本酒に関わる一節があり、日本酒についての最古の記述といわれています。神様にお供えした米にカビが生え、それを材料にして酒を醸造し、神酒として献上し宴を開いた、というエピソードです。

 

もともとお酒は神事や宮中行事に欠かせない神聖なものであり、奈良時代後半から平安時代初期にかけて、朝廷の役所である「造酒司(みきのつかさ)※1」で酒造が行われていました。「延喜式(えんぎしき)※2」という書物には、現代の酒造の基礎となる酒の種類や仕込み配合等が記述されています。

 

貴族の時代が終わり、武士が台頭してきた鎌倉時代、民間でも酒造が本格的に行われるようになり、酒造家や醸造家といった職人が現れるようになります。商業の発達と併せて日本酒は米に匹敵する価値を持つようになっていました。室町中期の文献には、京都市内で300軒余りの造り酒屋の名が挙げられています。京都で酒屋が発展したのは、諸国の貢米が三条室町の米の取引所に集まったことと、幕府が酒屋の税を重要な財源と考え、酒屋の発展を援助したためでした。

 

安土桃山時代では、日本酒の記述が国外に報告されていたとされています。織田信長に接し多くの記録を残した宣教師(ルイス・フロイス)が本国に「我々は酒を冷やすが、日本では温める」と書き送ったという情報から、「熱燗」の文化があったと考えられています。ちなみにこの時代には焼酎、南蛮酒、泡盛、ワインなどさまざまな酒文化が日本に入ってきています。

 

江戸時代に入ると、酒造りは職人の手によって大量生産が可能となり、冬に作る「寒造り」や、保存性を高める「火入れ法」、安全に発酵をさせていく手法として「段仕込み」といった技術も発達し、商人の手によって庶民にも広まりました。また、「日本酒には水が大切」という現在の酒造りの常識も江戸時代に広まり、灘などの名水のある地方に良い造り酒屋が多く生まれています。

 

明治時代以降に諸外国との異文化交流が行われるようになると、日本酒のほかビールやワインなどの外国由来の酒造も始まりました。自家製の日本酒を禁じ、酒に税金を課す「酒税」も定められるになったのもこの頃です。醸造方法について研究する機関もできるなど、日本酒も近代化の道を辿るようになります。

 

このように日本酒造りには、さまざま歴史の変遷があり、時代によって進化してきました。時代の流れに思いをはせながら味わう日本酒もまた格別といえます。

※1…造酒司は、律令制の下に置かれた酒・酢の醸造や季節行事のお酒を司った役所のこと。

※2…延喜式は、平安時代中期に編纂された格式(律令の施行細則)で三代格式の1つ。

日本酒の酒造量が多い都道府県

国税庁が令和4年に発表した資料によると、令和2酒造年度(令和2年7月~令和3年6月)の日本酒(清酒)の酒造量が最も多いのは兵庫県です。次いで京都府、新潟県と続きます。沢の鶴本社がある兵庫県は古くから日本酒造りが盛んな地域です。特に灘五郷と呼ばれる酒蔵地域は「日本一の酒どころ」と言われており、多くの酒蔵が集まり、日本酒が造られています。

出典:国税庁「清酒の製造状況等について(令和2酒造年度)」

その他の日本酒造りに関連する用語

注がれる日本酒ここからは、酒蔵・酒造以外の日本酒造りに関連する用語を取り上げます。

蔵元(くらもと)

製造元のことをいいます。「酒蔵」は蔵自体を表すが、「酒蔵さん」などと呼称し、蔵元と同義で扱われることもあります。

蔵人(くらびと)

杜氏以外の日本酒作りに従事する職人のことを指します。酒蔵の規模によっても担当する仕事は変わりますが、道具の洗浄といった細かい作業から専門知識や技術を要する高度な作業まで、日本酒造りのさまざまな工程に関わります。

 

蔵人には役職ごとに名前があります。

頭(かしら)杜氏の補佐役
大師(だいし)または麹師(こうじし)麹造りの責任者
酛廻し(もとまわし)または酛師(もとし)酒母の責任者、醪仕込み
道具廻し道具の準備全般・洗浄・米洗いなど
釜屋(かまや)蒸米造りの責任者

杜氏(とうじ)

酒造りにおける最高責任者(蔵人を仕切るトップを指す役職)のことをいいます。

 

杜氏集団は日本全国に存在し、各流派によって独自の技術があります。特に有名なのは「日本三大杜氏」と呼ばれる、兵庫の「丹波(たんば)杜氏」、新潟の「越後(えちご)杜氏」、岩手の「南部(なんぶ)杜氏」です。沢の鶴が酒蔵を構える兵庫の「丹波(たんば)杜氏」は、江戸時代から「灘五郷」という日本酒の一大生産地を支える杜氏集団です。他にも、全国各地にさまざまな杜氏集団が存在します。

歴史ある酒蔵を無料見学!「沢の鶴資料館」へお越しください

沢の鶴が本社を置く兵庫県神戸市灘区は、日本一の酒どころ「灘五郷」エリアに位置しています。沢の鶴資料館は、江戸時代末期に建造された木造の「昔の酒蔵」をそのまま資料館として公開しており、酒造りの道具とともに兵庫県の「重要有形民俗文化財」の指定を受けています。また、外観だけでなく内部も当時の造りを再現しているため、昔ながらの酒蔵の雰囲気を楽しむことができます。

 

酒蔵見学の後は館内併設の沢の鶴ミュージアムショップでお土産を選ぶことも!ミュージアムショップには純米酒や純米吟醸酒、生酒、原酒、古酒といった豊富なラインナップがありますので、ぜひ好みの日本酒を見つけてみてはいかがでしょうか。

沢の鶴資料館公式サイト
TEL:078-882-7788
そのほか、ミュージアムショップ限定の日本酒や、日本酒で仕込んだ梅酒、特製の奈良漬といった日本酒にぴったりのおつまみも販売しています。

おわりに

今回は日本酒を知る上でよく目にする「酒蔵(さかぐら)」と「酒造(しゅぞう)」の違いと日本酒造りに関連する用語を解説しました。酒造の意味や歴史、酒蔵に携わる人々の名称を知ることは、日本酒の歴史や技術に触れる機会につながります。それぞれの用語の意味に注目すると、もっと日本酒が身近に感じられ味わい深くなるのではないでしょうか。

沢の鶴資料館は、当時の歴史や雰囲気の魅力が詰まった酒蔵を再現しています。日本酒とともに日本酒の知識を深める良いきっかけとなるため、ぜひ兵庫にお越しの際は寄ってみてください。

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沢の鶴はおかげさまで創業三百年

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沢の鶴株式会社 酒みづき編集部
沢の鶴の日本酒がもっと好きになるWEBメディア『酒みづき』。

1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。

沢の鶴はこれからも日本酒文化を大切にしながら、みなさまの毎日の食事がもっと美味しくなるお酒造りを続けていくと共に、このWEBメディア『酒みづき』を通して、より多くの方々に日本酒の美味しさや楽しみ方に関する情報をお届けしてまいります。

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