~日本酒ができるまで~醸造工程から蔵人のこだわりを発見しよう
皆さんは、日本酒ができるまでに、どんな醸造工程を経ているのかご存じですか?日本酒は、蔵人のこだわりが詰まったお酒です。今回は、酒蔵で働く蔵人の仕事に焦点を当てて、日本酒の醸造工程をご紹介します。
どんな工夫がされているかが分かると、きっとさらに日本酒を好きになりますよ。
Contents
玄米を精米
日本酒造りはまず、日本酒の主原料である酒米を精米することから始まります。
多くの場合、食用米ではなく酒造り専用の「酒造好適米」を使用します。米の表層にはたんぱく質や脂質など、お酒の雑味の原因となってしまう栄養素が含まれているため、3割ほど磨き上げます。
このとき、どのくらいお米を磨くかが日本酒の味わいに影響してきます。例えば、ある大吟醸酒の精米歩合が45%だとすると、55%ほど米を磨いて、華やかな香りの大吟醸酒を醸造するのです。
精米の際には、摩擦熱が発生します。この摩擦熱は、精米歩合が高いほど温度が高くなります。摩擦熱が残ったままになると次の工程で吸水しすぎてしまうため、摩擦熱を冷ます時間が必要です。精米のタイミングから、じっくりと時間をかけているのですね。
精米歩合によって香り・味わいがどう変化するのかは、こちらのコラムで詳しくご紹介しています。
洗米/浸漬(しんせき)~蒸米/放冷
次は、精米した米を洗って、糠(ぬか)や汚れを取ります。洗米後、適量の水分を吸収させるために、米を水に浸す工程が「浸漬(しんせき)」です。米がどれくらいの水を吸うのかは、その日の気温や湿度などによって変化します。米の品種や精米歩合なども加味して調整をしながら、洗米~浸漬まで進める必要があるのです。
浸漬が終わったら、米を蒸す工程に移ります。炊くのではなく蒸す理由は、酒造りに適した水分量に調整するためです。甑(こしき)と呼ばれる大きなせいろか、蒸米機を使用します。
蒸す際も、その日の気温や湿度を考慮した米の量・温度調整が重要です。
蒸した米は、麹(こうじ)造り、酒母造り、醪(もろみ)造りに応じた温度になるまでそれぞれ冷やします。
麹(こうじ)造り
蒸米に麹菌を付着させ麹を造る工程です。この麹がどんな出来になるかが、日本酒の味わいを左右します。
蒸米に麹菌を振りかけてから10~12時間後、温度が上昇してきます。この時、蒸米の位置によって温度のばらつきがないように、均一に混ぜていきます。温度が低下しないよう、時間をかけず素早く混ぜなければなりません。
さらに、発熱した麹を盛る作業、均一に放熱するために混ぜ合わせる作業など、常に温度管理をしながら蔵人は麹と向き合うのです。
ちなみに、麹は低温の環境では育たないため、麹室は常に30℃以上の真夏状態です。
こちらのコラムでは、麹菌の役割についてご紹介しています。
酒母造り
先ほどの麹に、水を混ぜ合わせ、酵母と乳酸菌、蒸米を加えて酒母を造ります。酒母は、一般的には2週間から1カ月で完成します。
酒母を手作業で造る製法が、「生酛(きもと)造り」です。生酛(きもと)造りの場合、乳酸の添加はせず、蔵の空気中の乳酸菌を取り込みます。人工の乳酸ではなく、天然の乳酸菌を使用する場合は約1カ月と、通常の2倍以上の時間がかかります。米の旨味を最大限に引き出せる醸造方法なので、蔵人たちは時間と手間をかけてでも生酛(きもと)造りの日本酒を生み出し続けています。
生酛(きもと)造りについてはこちらもぜひご覧ください。
「生酛(きもと)造り」ってどんな製法?「山廃仕込み」との違いとは
醪(もろみ)・仕込み
酒母をタンクに入れ、麹、蒸米、水を加えて発酵させます。約3週間から1カ月かけて発酵させたものが、日本酒の原型となる「醪(もろみ)」です。
酒母の中に麹、蒸米、水を入れる際は、全量を一気に入れると、酵母が薄くなって酸度が下がり、雑菌や野生酵母が増殖する恐れがあります。そのため、蔵人は3回に分けて醪を仕込み、ゆっくりと発酵させているのです。これを「三段仕込み」といいます。
醪の発酵中、蔵人は毎日醪の日本酒度、酸度、アミノ酸度、そしてアルコール度数をチェックします。発酵の状態や成分バランスを見ながら、温度調整、水分調整(追い水)と、手を抜くことはありません。
三段仕込みについては、こちらのコラムもぜひご覧ください。
日本酒の「三段仕込み」とは?仕込みによる味わいの変化を知ろう
上槽
ついに液体の日本酒が登場する工程が、「上槽」です。醪をしぼって、液体(日本酒)と固体(酒粕)に分けていきます。
上槽のタイミングによって、どんな味わいの日本酒になるかが決まると言っても過言ではありません。気温や成分分析値などを元に、慎重に決定されます。また、どんな種類の日本酒を造るかによって、搾り方も変えています。
こちらの記事では、上槽工程で分けられる酒粕に焦点を当ててご紹介しています。
酒粕とはどんなもの?日本酒と酒粕を分ける、搾り~上槽工程について
濾過(ろか)・火入れ
搾りを終えた日本酒は、まだ米の粒子や酵母の小さな固形物が残っている状態です。そこで、活性炭などで濾過(ろか)をしてクリアな日本酒に仕上げていきます。濾過(ろか)をすると、黄色だった色が透明になり、雑味、苦味も取れていきます。
その後の工程が、「火入れ」です。火入れとは、殺菌・品質安定を目的とする加熱処理のこと。この火入れを行うことで、日本酒は一定の期間、酒質の変化なく楽しむことができるのです。
しかし、火入れを行わずフレッシュな味わいを楽しめる日本酒の種類もあるのをご存じですか?
こちらの記事では、火入れの有無やタイミングによって違う味わいを楽しめる、日本酒の種類をご紹介しています。
火入れのタイミングで変化する日本酒の味わい。生酒、生詰、生貯蔵とは
貯蔵/調合・割水
火入れの後は、貯蔵期間があります。約半年~1年貯蔵することで、味わいはまろやかになり、角の取れた飲みやすい口あたりに変化していきます。
貯蔵期間中は蔵人も休みという訳ではありません。種類や銘柄に合わせて貯蔵温度を変更したり、腐敗がないかなどを確かめるために利き酒を行ったりと、最後まで品質管理を徹底して行います。
貯蔵期間が終わってから、割水などによってアルコール度数・味わいの最終調整に入っていきます。
貯蔵期間は、日本酒の味わいにさまざまな特徴を与えます。例えば、3年以上熟成させた日本酒は古酒(長期熟成酒)と呼ばれています。また、その年に収穫された新米で醸造し、貯蔵期間を短くして出荷されるのが「新酒」です。これらは、同じ日本酒とは思えないほど違う味わいを楽しめます。
下記の記事でさらに詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
火入れ・瓶詰め
日本酒造りもついに佳境を迎えます。 最終工程が、火入れ・瓶詰めです。
出荷前にもう一度火入れをすることで、酒質を安定させます。その後、瓶やパックに詰めて、皆さんのもとに届けられるのです。瓶詰めやパック詰めの作業は、蔵人にとって大切な我が子が巣立っていくような感覚です。
おわりに
今回は、蔵人の作業工程から、日本酒ができるまでの流れをご紹介しました。
単純な流れ作業ではなく、精米から瓶詰めの工程までさまざまな調整、試行錯誤の上で日本酒は出来上がります。皆さんが日本酒を味わうときも、ぜひその銘柄の産地や特徴を捉え、蔵人の仕事風景に想いを馳せてみてくださいね。
1717年(享保二年)、灘の西郷で米屋の副業としてスタートした沢の鶴の酒造り。「米を生かし、米を吟味し、米にこだわる」酒造りは創業から300年以上も続く伝統です。
これまでにモンドセレクション世界酒類コンクールにて数々の賞を受賞。2007年には10年間連続で最高品質の商品を生産してきた企業に授与される最高栄誉賞(THE CRYSTAL PRESTIGE AWARD)も受賞するなど、日本酒業界において数々の功績を残しています。
沢の鶴はこれからも日本酒文化を大切にしながら、みなさまの毎日の食事がもっと美味しくなるお酒造りを続けていくと共に、このWEBメディア『酒みづき』を通して、より多くの方々に日本酒の美味しさや楽しみ方に関する情報をお届けしてまいります。
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