日本酒の「冷や」と「冷酒」の違いは?知っておきたい温度別の呼び方
飲食店でよく「お冷やをください」という言葉を耳にします。この場合のお冷やは、「冷たいお水」という意味で使われています。
「冷や(ひや)」という漢字や意味から、冷たい飲み物を意図して使われるのは当然のことかもしれません。しかし、日本酒になると「冷や」の意味ががらりと変わってくることをご存じでしょうか?
今回は、日本酒の「冷や」と「冷酒」の違いと、知っておきたい温度別の呼び方についてご紹介します。
Contents
「冷や」と「冷酒」の違い
日本酒において「冷や」とは、「常温の状態のお酒」を意味します。
冷蔵庫のない時代、日本酒はお燗で飲むか、温めず常温のまま飲むかの二択でした。そのため、お燗よりも温度が低い常温のお酒を「冷や」と呼んでいたのです。
一方の「冷酒」は、冷蔵庫や氷水の中に入れて冷やした、「冷たい状態のお酒」のことです。グラスに氷を入れて飲む「オン・ザ・ロック」や、かき氷やクラッシュアイスにお酒を注ぐ「みぞれ酒」もあります。
現代においても、「冷や」は冷やしたお酒ではなく、常温のお酒を指して使われています。居酒屋などの飲食店でも、「冷や=常温のお酒」と定義していることが一般的です。
ただ、近年は冷酒のことを「冷や」と呼ぶ人も増えています。飲食店などで注文する際、どちらの意味で取られるか分からず不安な場合は、「常温でください」「冷酒をお願いします」などと、確実に伝わるように注文することをおすすめします。
冷酒の温度別の呼び方
冷たくしたお酒を指す「冷酒」には、5度刻みの違いで「涼冷え(すずびえ)」、「花冷え(はなびえ)」、「雪冷え(ゆきびえ)」などの細かな呼び分けがあります。
涼冷え(すずびえ)
15度程の、「涼やかな冷たさを感じる日本酒」が涼冷えです。目安としては、冷蔵庫からだして10分くらい経った頃。華やかな香りが立ち上がり、ツンとするほどは冷たくない、まさに涼やかな温度です。
花冷え(はなびえ)
花冷えは「花さえ冷たくなる温度の日本酒」で、10度くらいのものを指します。香りが弱まり、きめ細やかな味わいになります。
雪冷え(ゆきびえ)
雪冷えは、「雪のように冷えた日本酒」です。冷酒の中でも特に温度が低い5度あたりの日本酒が、雪冷えと呼ばれます。よく冷やすことで香りが抑えられ、シャープな味わいになります。
冷酒の冷やし方のポイントはこちらの記事で紹介しています。
燗酒の温度別の呼び方
燗酒(温めたお酒)も、5度刻みで「日向燗(ひなたかん)」、「人肌燗(ひとはだかん)」、「ぬる燗」、「上燗(じょうかん)」、「あつ燗」、「飛びきり燗」と呼び方が変わります。
日向燗(ひなたかん)
日向のようなポカポカとした温度です。燗酒の中でもっとも温度が低いのが、この日向燗です。
温度は30度程。酸味や旨みの輪郭がハッキリと出始め、お酒の本質的な品質の良さも感じ始める温度です。
人肌燗(ひとはだかん)
35度程が人肌燗になります。お風呂よりちょっとぬるめの温度でしょうか。
口に入れたときもややぬるめに感じられる、やわらかく優しい温度です。
米や麹の良い香り、やわらかな味わいが楽しめます。
ぬる燗
ぬる燗は、40度程の燗酒です。「ぬるい」という言葉が冠されていますが、口に含んだ瞬間にやや熱さが感じられる温度です。
お酒の旨みや味わいがふくらみ、おいしさを存分に感じられる温度とされています。
純米酒系におすすめです。
上燗(じょうかん)
上燗は45度程、口に入れると熱さを感じる温度です。
味わいのバランスと後味のキレの両方が楽しめる温度といえるでしょう。
あつ燗
上燗よりさらに熱い50度程があつ燗になります。
あたためたお酒を総じてあつ燗と呼ぶ方もいますが、本来の意味は、燗酒の中でもかなり温度の高い区分を指します。寒い日に体を温めるのに最適な温度です。
飛びきり燗
50度以上をまとめてあつ燗と呼ぶこともありますが、55度を区切りとして飛びきり燗と呼ぶこともあります。燗酒の中でも温度が「飛びきり」に高いためです。
香りが強くなり、味わいに刺激を感じますが、淡麗辛口のお酒だと、さっぱりと飲めます。
おわりに
日本酒は、「冷や」は常温、「冷酒」は冷えた状態のことを指します。温度によって味わいが大きく変わりますので、飲食店で注文する際には間違えないように気を付けてくださいね。
好みの温度の呼び方を覚えておくと、いつもと違う飲食店で日本酒を飲むときも、いつもの飲み方で楽しむことができますね。温度にこだわって日本酒を楽しみたい方は、ぜひ温度別の呼び方についても覚えてみてください。
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